今月のメッセージ
産土 の神様のこと (十二)
日垣宮主
此の頃人々の広がりつつある話題の中に
散骨
葬礼がある。
死者の
遺骸
を粉末化させて海へ
撒
く 山へ撒くと言う葬礼であるが 果して此の行事に携わる者達 遺骨が如何なる存在であるか御存知か? と思う。
私は幼児の頃から死ぬことが恐ろしくてならなかったのだが 此の思いは私の中の何処から生まれるのかと振り返ってみる。
少年期から青年期にかけて求め続けた此の問題はなかなか解けなかったが漸く最近になって氣が付いたことがある。
人の身体を構成する細胞は父と母の遺伝子を含むのだが もう一つ 人体を此の世へ出現させる エネルギー体があって 此のエネルギー体は肉眼では見えない。
動物が生まれる生殖作用は精子と卵子の結合に依ると言うのだが それだけでは亡くて更に 魂の影の様な存在があり此の影の事を宮主は
霊影
又は
魂影
と呼んでいる。
そして此の霊影は一人ひとりの霊魂が初めて誕生した遠い昔から今に到る迄の歴史を全部集めて 何度も生まれ変ってきた人生の
心景
が染みこんでいる そして其の心景の響きが人体の骨髄の中に入っている。
斯く言う私自身 曽つて 此の前生模様を絵巻物を見る様に見せられた覚えがあるのだが その前生を見る時 幾度も 幾度も 斬り殺され刺し殺され或は病死の繰返しであった その残念が私の中で幼児の頃から死の恐怖を生んでいたのだろう。
扨
斯様な次第で生と死に取り組んだ結果 さまざまな死と其の因果に関りながら其の乱れを治める道も少しずつ解ってきた。
生と死に関る問題の中 是非知って貰いたい事の一つが 大地と人の関係 である。
土の一粒一粒が生きもの。
土の一粒の中に魂が宿る。
日本列島構成の大地の悉くが一粒の土の精霊の集合体である。
その土が様々に変化して或る時は家屋建立の屋敷になり 或る時は田畑の土となり 或る時は人の遺骸を受け入れる霊園になり 此の世相が生まれてゆく。
今迄 産土の神の話を綴ってきた。
此の大地に生き続ける精霊達が居て 海 山 川 野 泉 森林 などそれはそれは人間の知識外の世界が展開する。
人間を含めて此の世界は
現
し世と
隠
り世の二つに分かれ 此の世が現し世 そして其の奥が隠り世になっている。
隠り世が無かったら現し世は消滅する。
現し世と隠り世を結ぶ世界があって 此の世界の事を
出雲
神界 と申しあげるのだが 産土の神 は此の出雲神界の神々であった。
人に骨がある。
死んで土の中へ戻る。
骨が其の精髄を土の中へ結ぶと土が骨の精髄を再び蘇えらせる。
此の土の世界の事を古事記の中で
比婆山
と名付ける。
比婆山は
黄泉大神
伊弉那美
の神の世界と知る時 改めて 此の大地の変幻相の不思議を思い知る。
そして 人間再生の仕事に携わる産土の神の存在の広大無遍を思うのです。
二〇〇七年七月二十五日