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今月のメッセージ


産土 ( うぶすな ) の神様のこと (二十二)

日垣宮主


 日本中に神社があって神霊をおまつりする、その中に産土の神がおいであそばすのだが本当のところ、産土の神体にお会いした者は無いと思っている。
  考えてみれば、人間が住む住宅・家屋・と全國の産土神社と較べると、人間の住む家屋の方が神社の社殿より遙かに豊かな建築になっているでは無いか。
  その様な神殿に向って 眞心 を捧げ祈りを捧げ、お蔭をくださいと祈っているのが今の世の中である。
  世の中は陽と陰の交流で保たれるのは誰でも知っている そして 陽は陰を呼び、陰は陽を呼ぶことも知っている。
  産土の神様は陽なのか陰であるのか、考えて戴きたい。
  此処のところが大切。
  伊賦耶坂 ( いふやさか ) と言う神界が出雲の神國振りの中に在って此処は陽と陰の 境目 ( さかいめ ) になっている。
  何故、陽があって陰があるのかと言うと陽と陰の境があるからで、此の陽と陰の境が無かったら陽も無く陰も無くなるのだ。
  そこで
  産土神界を眺めよう。
  産土神界に少名彦那の神と大穴牟遅の神が分魂を置きなさるのだが、此の神々がお 出坐 ( でま ) しあそばす神座こそ伊賦耶坂である。
  言うなれば伊賦耶坂が産土神界で其の神界へ少名彦那と大穴牟遅がお出坐しになると知って貰いたい。
  斯様 ( かよう ) な次第であるから、産土神界・伊賦耶坂・其処に虚空の 風 が吹き渡ってゆく。
  其の風が爽やかに吹き渡る神境が無いと産土の神力が ( ) べないことになるので、産土神社には必ず「神の森」が必要である。
  大地が産土の神の神体である。
  大地全体の神力を一点に集める所に神の森が茂り、その神の 恵風 ( えふう ) を集めて人々にお ( ) けくださる所に神殿があり神鏡が置かれる。
  此れは産土の神座造営の基本姿勢であるのだが、眞實のウブスナ様は太陽の火と月の水と星の風の三魂を集めねばならない。
  太陽も月も星も天上に在る、その三魂を地上に映してこそ産土の神座と言えるのだが、 風速 ( かぜはや ) の森は造れるだろう、月読の水を湧かせる 神井 ( しんせい ) を造れるのか、日の 神柱 ( みはしら ) 立つ 砂庭 ( いさにわ ) を造る作法は御存知かと改めて思うのだ。
  曽つて産土神の本は出版させて戴いたが、産土の神座造りをせめては此の一文から認識して戴きたい。
 

二〇〇八年六月二十七日


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