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今月のメッセージ


庭と庭石の話

日垣宮主


  或人が宮主に尋ねました。
 日本の古い庭には 庭石 があります。
 庭石には何か意味があるのでしょうかと言ふお尋ねです。
 宮主は格別庭園の仕事をする者ではありませんが、時には頼まれて庭造りの指導をして参りました。
 その折々、一般家庭の庭を造ったり、旅館の庭を造ったり、その他、各種の( あきな ) ひをする商店の庭を造ったり、それはそれはさまざまでありますが、何処で何の為に造るかに依って其の庭の作り方がございました。
 庭は家屋に付随します、人に付随します。
 家屋の無い庭、そして人に無縁の庭は野原になります。
 ですから、庭造りは其処に関わる人間に依って造形に変化が生まれます。
 私は庭造りの始めに、今迄其処に配置されていた樹木や岩石など一切を一度、心の中で消し去ります。
 そして庭と言う大地に向かって語りかけます。
 中心に何を求めますかと問ひかけ其の中心点を何処に置いて欲しいかと聞きます。
 それから一つひとつ樹木や岩石や流水を配置するのですが、岩石にも表と裏があり、岩石に依って東西南北のうち向きたい方向があるのです。
 樹木でも一本一本の向きがそれぞれの樹木に依って向きたい方位があります。
 岩石でも横に置く石もあれば立ちたい石もありますので庭師と云う人々は長年の経験で自然に樹木岩石流水の心が御分かりになるのでしょう。
 斯様な次第で、質問に応へますなら、庭園に置く石は其の庭から生まれる 生氣 を集めたり發散させたりする精霊の立場に置かれます。
 ですから庭石は石全体の三分の一だけ地上に出し残りの三分の二に地中に置かねばなりません。
 庭の大地の力を岩石の三分の二入れた地中体が吸ひ込んで、その力で庭園全体の空氣を適宜な流れに調節いたします。
 人間は家屋に住みますが、其の家屋が幸運を招ぶか凶運を招ぶかの家相は其の家屋を置く屋敷の吉凶に深い関わりのあることを知らねばなりません。
 私が書いた「日本に伝はる智恵の泉」は参考になるでしょう。

2012年12月1日

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